ドクターブログ

歯列接触癖(TCH)

 下顎骨は,筋肉(主に咀噌筋)を介して頭蓋・顔面にぶら下がっている状態で,開口時に,下顎頭は蝶番運動のみならず,筋肉のバランス下で前方滑走運動を行います。したがって,下顎の動きは筋肉により規制されることとなります。歯列接触(TCH)があると,筋肉が長時間収縮することで筋疲労が起こり,顎関節症をはじめとして頭痛・肩こりといったさまざまな症状が現れることがあります。また,筋肉の緊張状態に左右差が生じると,下顎骨が緊張側に引っ張られ,本来の顎位ではない位置で咬むようになり,顎位か不安定とれなります。したがって,TCHコントロールができれば,筋肉がリラックスした状態になります。
 関節円板の前方転位の有無にかかわらず,開口時に左右の下顎頭がスムーズに前下方に動くことで十分な開口量があり,強制開口させても顎関節に痛みがなく,しかも咬合違和感もないという,顎位か安定した状態を維持していることが,第一段階のTCHコントロールができたことになります。この状態になっていることは,次のようにして確かめます。術者が被検者の顎関節に手を添えて,スムーズな前方滑走・側方運動を確認、強制開口で顎関節に痛みが出ないことを確認、また下顎頭が前下方に動ききることで十分な開口量が得られているまたことを確認します。
 何らかの理由で長期間にわたり噛めない状態が続くと,筋肉が痩せて,下顎骨を一定の位置に支えるだけの力がなくなる.そうした症例では,食事をしようと頭を前傾しただけで,下顎骨が前下方に下がり、前歯だけが当たり,臼歯部で噛むことのできない事態に陥る.このことから,治療用チェアに寝かせた状態と起こした状態では,咬合位か異なる可能性が示唆されます。そこで,TCH是正咬合療法では,一般的に頭を起こした状態で上下の歯が触れる咀噌・嘸下・会話を行っていることから,治療用チェアを起こし,背筋を伸ばし,頭を垂直に保った状態で咬合位を決めます。この際,患者さんが緊張気味であれば,第一段階で脱力していただきます。これは,咀嚼筋の緊張により,本来の位置ではない位置で噛んでしまうことを防ぐためである.次に,軽くタッピングを続けさせた状態を,術者は詳細に観察して,いつも同じ位置で咬合していることを確認します。確認で
きたところで,対合関係が目視できる数箇所の咬合ポイントを見つけて,現在の咬合位の基準点として記憶します。
 TCH是正咬合療法は,関節円板や下顎頭の位置・形態などにこだわる必要がないので,すべての老若男女に適応でき,顎関節症の治療から生まれた療法なので,顎関節治療,顎関節症予防が可能になる.歯科医師が,顎関節症治療から歯科技工までも担当して,現在の口腔内に調和した補綴治療を行うことができるため,咬合違和感の発症を最小限におさえることができ,歯科医師としての技量がいかんなく発揮できる.
 この療法が中心となるTCHコントロールを習慣化させることで,顎位の安定だけでなく,次のような利点がある.
1.上下の歯が触れていない時間が長時間化しているため,咬合高径を上げる治療が可能となり,歯牙移動もスピーディに行る.
2.口腔内に加わる力が減るために,歯周病・歯牙破折・鎬蝕・インプラントの早期脱離・骨隆起・知覚過敏などといった口腔内疾患の予防に貢献する.
3.TCHコントロールに習熟することで,夜間TCHがあると目覚めるようになり,くいしばりやブラキシズム軽減に役立つ.



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